膝関節総論2〜靭帯について〜


靭帯の構造や役割、特徴について知ってみましょう。


定期的に身体のこと、怪我のことや対処の仕方、トレーニング/リハビリのことなどについて発信していきます。
今回は膝関節を構成する靭帯について構造や発生しやすい怪我などをご紹介していきます。

1.膝関節の靭帯
靭帯はコラーゲンが主成分となり形成されています。そして靭帯を形成しているコラーゲンは特殊な形状を持ち(クリンプ形状)、その形状が外部からの力や靭帯に求められる機能に対して変化することで刺激に応答しています。

靭帯が骨に付着している部分では、さらに特徴的な形状が見られます。筋肉の活動や外力により、骨という非常に硬い組織に対して生じた力を、靭帯のような比較的柔らかい組織が動きを制御するという関節の構造上、硬い組織(骨)と柔らかい組織(靭帯)の接点に応力が集中することになります。
そのため、関節の中でも比較的大きな外力のかかる膝関節周囲靭帯においては、柔らかい組織である靭帯には4つもの層が形成されていて、そのことにより骨の運動に伴う靭帯へのストレスが一点に集中することを防ぎ、分散することで力への応答を可能にしています。

2.靭帯の機能
膝関節の周囲靭帯は、大腿骨と脛骨(ふくらはぎ内側の骨)を関節方内・外で強固に連結させて正常な骨の動きを誘導しています。各靭帯の役割としては、”内側側副靱帯“は外反方向の力に対して主要な制限因子で、”外側側副靭帯“は逆の内反への主要な制限因子となります。膝関節は構造上、直接的に外反力や内反力に抗う力を発揮できる筋肉は存在しないために、これらの外力に対しては側副靭帯が最大かつ唯一の制限因子となります。

前・後十字靭帯の主な役割は大腿骨と脛骨の前後方向と回旋動作の制動です。“前十字靭帯”は大腿骨に対する脛骨の前方偏位(ふくらはぎの骨が前にずれる)を制動し、“後十字靭帯“は脛骨の後方偏位(ふくらはぎの骨が後ろにずれる)を制動します。
また、両十字靭帯は内側・外側側副靭帯いずれかの損傷時には、ごく軽度にそれらの役割も担うとされてはいますが、十字靭帯損傷時には前後方向の変位に対しては、十字靭帯以外の組織では役割を担うことはできません。この損傷時における補助機能の有無というものが、側副靭帯は保存的に治癒しますが、十字靭帯は治癒しない要因の一つに挙げられます。

また、前十字靭帯は走行の特徴により、大腿骨に対して脛骨が内旋する場合は両十字靭帯がより捻り合うような構造になり、脛骨-大腿骨間の安定性が高まります。一方で脛骨の外旋では、この捻れが緩む方向になってしまうために、両十字靭帯による安定性は低下してしまいます。この構造的特性は、前回お伝えした発症頻度の高い前十字靭帯損傷が、膝関節の“外反位”との関係が強いとされている要因です。

3.靭帯損傷の受傷機転
・前十字靭帯
前十字靭帯の受傷タイプは、大きく分けて接触型と非接触型に分けられます。接触型損傷はラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツにおける受傷が多くあり、膝関節の外反や過伸展(膝が更に伸び切る)を強制されると受傷するとされ、競技特性上、男女比では男性が多いです。非接触型では、着地やストップ動作、ジャンプ動作などの減速・加速混在動作など、膝関節に外力と筋による力の双方が加えられた際に受傷する場合が多いです。受傷者は圧倒的に女性が多く、特に15~25歳の若年層に頻発します。

・後十字靭帯
膝を曲げている状態で脛骨に対し、後方への外力を受けることで受傷します。膝関節屈曲位で膝に近い脛骨の部分が地面に接触することや、交通事故において助手席に乗っていた人が屈曲位のままダッシュボードに足を強くぶつけるダッシュボード損傷が一般的です。さらに、着地時に膝関節“深”屈曲位で足関節(足首)が背屈を矯正されるような形でも受傷します。

・内側側副靱帯
内側側副靭帯の損傷は、膝関節の靭帯損傷の中で最も損傷頻度が高く、受傷機転は前十字靭帯損傷とほぼ同様です。膝関節の構造上、スポーツ動作のみならず日常生活動作においても外反力は容易に生じやすく、内側側副靱帯はその場合の第一制御機構となるため、非常に軽度な損傷も含め高頻度に受傷します。こちらも接触型と非接触型に分けられ、前十字靭帯損傷との合併損傷の頻度も非常に高いです。

・外側側副靭帯
外側側副靭帯は膝関節の内反強制により受傷しますが、前回でもお伝えした通り膝関節は構造的に生理的外反があるために、外反力は生じにくく、タックルなどの強力な外力を受けた際に受傷しますが、その発生頻度は内側側副靱帯と比べ圧倒的に低いです。このため、外側側副靭帯の単独損傷はほとんど見られず、多くは前十字靭帯との合併、あるいは後十字靭帯との合併による損傷となる場合が多いです。


4.予告
次回は、半月板の構造や機能、受傷機転についてのお話です。
ぜひ引き続きご覧ください!!

投稿日: 2023年10月31日

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